【QA回答】(Day1)内製化実現のための社内カルチャー変革
デロイト トーマツ ウェブサービス株式会社エンジニアの安木です。
当社では2023年7月の毎週水曜日12:00-12:30に内製化実現のための社内カルチャー変革」というテーマでウェビナーを開催しております。
約100名の方から申し込みがあり、現場エンジニアから管理職まで、多くの方にご参加いただいております。ありがとうございます。
視聴申込はまだ間に合います。ご興味のある方はこちらのリンクからご参加をお願いいたします。
こちらのブログでは、全4回のウェビナーのうちの第一回「より素早く安全なリリースが求められている背景」で寄せられた質問について回答いたします。
ウェビナーのおさらい
前半では当社代表取締役でありAWS Ambassadorを務める国本より、「ビジネスに速さが求められている背景」をご紹介いたしました。
昨今、業種や業態を問わずお客様との接点はデジタル化しており、事業会社におけるテクノロジー活用は、市場競争力で欠かせないものとなっています。また、安定運用を求められる既存システムの運用についても、近年の社会情勢の激しい変化により、リリースの素早さが求められています。
しかし、日本国内の大多数の事業会社ではITやデジタル領域をSIerに丸投げしており、自社のビジネスにテクノロジーを活用しようとしても、主導権を持って施策を推し進めていくことができません。また、安定運用を求められるシステムについてもそのスピード感に対応することが求められています。
また、後半では現場エンジニアの観点で「開発スピード向上の限界」というテーマでお話しました。具体的には以下二点が課題となっております。
- ITを外部ベンダーに丸投げしている体制による認識齟齬
- BizDevOpsの分離によるコミュニケーションの分断
これの解決策として内製化、BizDevOpsの一体化が挙げられますが、そのためには構造変革や人材確保、BizDevOpsのためのスキルが必要となり、難易度が高いです。
こういった課題を解消するのが「共創」「伴走支援」という考え方です。
ただ外注をやめるのではなく、外部委託、SIerが一体化して共創することにより、「より素早く安全なリリース」を実現するという考え方です。
これについては、来週の第二回「より素早く安全なリリースを実現する内製化,DevOps」や、それ以降でご紹介いたします。
QA回答
ご質問が多数寄せられました!ありがとうございます。
以下に全件ご回答いたします。なお、回答は全て、2023年7月5日時点での見解です。将来変更になる可能性がございますことをご留意ください。
採用の部分で、内部の人材がどんどん外部に流出しています。こういった点も対策はありますか?
一例として、私が前職の大手SIerから当社DWSに入社を決めた理由は、自分の市場価値やキャリアに不安を覚えたからです。外部でも通用するスキルを身に着けたいと思ったときに、今の会社だと社内でしか通用しない人材になってしまうと思いました。
BizDevOpsや内製化について理解が深いエンジニアは、市場価値も高いです。そういった施策に会社や部署が本気取り組んでいて、そこで自分が活躍できるという実感が持てるのであれば、私の考えていたような理由での人材流出はなくなると思います。
また、講演内でもお話したように、エンジニアを支援するようなキャリアパスが体制が整っていることも大切です。
ありがとうございました。今日ご紹介していただいたものはクラウドが前提になりますでしょうか?
結論としてはクラウドでなくても可能です。本日ご紹介した事業会社とSIerの共創やBizDevOpsの一体化は、テクノロジーとは独立した概念です。クラウドを使わずとも内製化をしたり、ビジネスと開発の距離を近づけたり、BizDevOpsの一体化をすることはできます。ただし、短い期間でリリースするという点では、クラウドの方がインフラの調達が早く使い捨てもできるので、クラウドの方が相性は良いです。
BizDevOpsの最終形は、完全な社内での内製の体制と想定されているのでしょうか?
結論としては、完全な社内での内製は不要だと思います。元々の目標としては「社会の変化についていく」「より早く安全なリリースを実現する」だと思います。今後ご紹介しようとしている「共創」という概念は、受注側と発注側が一体化することで、内製化と同等か、それを超える効果を得るものだと思っています。もし事業会社でカバーできるのであればそこから内製化につなげることもできるだろうし、SIerがITに特化した企業として事業会社の想定を超える提案ができてより一層ビジネス価値を高めることができる場合は、共創の方が望ましいという場合もあると思います。
わかりやすい説明ありがとうございます。国本様に質問です。デロイト トーマツ ウェブサービスさんはエンジニアリングに力を入れている組織だと思います。そういった組織になるために、組織づくりで意識していることはなんですか?
今後はエンジニアリング力がビジネスにおける鍵になると感じています。したがってそれを体現する文化、カルチャーを醸成することを重視しています。
競争優位性の高いエンジニアになってもらうために、個人のスキルセットの向上やドメインの拡充が狙えたり、エンジニアのモチベーションを保てる環境や案件を社として提供できるようにしています。また、さらにそういった知的探究心やエンジニアリング力を高める学習支援をビジネス活動として捉えること。また、何よりも経営層がデジタルビジネスに携わる者としてエンジニアリングの重要性を認めて投資、コミットし続ける意思を表示することを意識しています。
発表ありがとうございました。採用するに当たってどういった人を評価していますか?技術的な面とそれ以外の面で、ポイントを教えて欲しいです。
技術的な側面だと、高い知的探究心を持ち、市場の動向や自身のキャリアを鑑みて具体的なキャッチアップ活動を続けているかという点。また、普遍的な領域、クラウドやネットワーク、デザインパターン、テスト領域等でどのような経験を保持しているかという点を見ています。
技術面以外だとカルチャー、当社ではMore Proffesinal More Trust More Funを体現していますが、そういったカルチャーフィッティングするかという点と、自走力も見ています。
ありがとうございました。エンジニアの受け入れ体制のある評価制度とはどのようなものですか?
大手SIerでは、若手のうちはエンジニア経験を積んで、年次があがったらそのままPL,PMになってベンダーコントロールをしたり、管理職になると言ったキャリアパスが多いと思います。一方でテックに特化した企業では、「テックリード」「スペシャリスト」等、ITの知見を生かしたままキャリアアップできる制度を設けている企業も多々あります。マネジメントではなくエンジニアリングに特化したままキャリアをアップさせていくことが可能な体制を持つ企業もあります。
ただし組織体制によって、案件に入って現場で技術力を発揮するのか、CoE的な組織を作ってエンジニアリングの知見を集約するのか等、フィットする体制があります。企業体質にもよりますが、いずれにせよエンジニアの技術力をいかしたままキャリアアップできる体制を社内で構築することが必要になります。
SIerです。内製化というと外注をなくすということだと思うのですが、共創という概念では外注自体はなくならないのですか?
結論としては、「共創」という概念では外注自体はなくなりません。共創では外注しているSIerと共にビジネスの価値を高めていきます。先述の「BizDevOpsの最終形は、完全な社内での内製の体制と想定されているのでしょうか?」でも回答した通り、ビジネスのスピードを上げることに対する課題は「外注」そのものではなく、外注によってビジネスとITが分断されているという点にあります。したがって、単なる受発注を超える「共創」という概念で、事業会社のみで内製化しなくても、事業会社とSIerが一体化することでこの課題を解消することができます。
本日はありがとうございました。「安全にリリース」についてイメージがわきませんでした。具体的にご説明をお願いできますでしょうか。
「安全に」という言葉は、IPAの発行するDX白書2023より引用しています。引用元では例えば「変化に応じ迅速かつ安全にITシステムを更新できる」というように使われています。今回のウェビナーでは、これを「システム障害やインシデントを発生させずに確実にリリースすること」と捉えています。文脈によってはDevSecOpsのように開発の早い段階からセキュリティを確保すること等も安全なリリースと捉えることができますが、今回のウェビナー上では上記の通り解釈していただきたく思います。
今回お話頂いた課題は当てはまる組織が多いかと思います。次回以降、課題解決に対するソリューションについてお話される予定でしょうか?
はい、次回以降ではソリューションについてもお話いたします。具体的には
- 第二回:より素早く安全なリリースを実現する内製化,DevOps
- 第三回:内製化、DevOpsカルチャーの導入の方法
- 第四回:内製化、DevOpsを実現する具体的なテクノロジー
という順序で進んでいきます。特に第二回では課題解決の核となる「共創」という概念、第三回ではそれを実際にどのように現場に導入するのか、第四回では実際に現場で活用するテクノロジーを紹介してまいります。