「たのしいロゴづくり」を読んで
##「まず、ロゴって?」
「ロゴ」と一口に言っても「ロゴマーク」「シンボルマーク」「ロゴタイプ」など様々あります。ロゴタイプというのはあまり耳慣れない言葉かもしれませんが、文字を使って社名や商品名をひとつのまとまりとして表すことです。
ロゴを作る上で大切なこと4つが本書では挙げられています。
- 基礎的な技術を学ぶこと
- いろいろな文字の形を知ること
- 質の高いロゴを見ること
- しっかりと自分の頭で考えること
つまりは、学ぶ・知る・見る・考えるということが重要だということです。これはおそらくあらゆるもののデザインに通じることであり、「アイディア力」や「センス」を養うのだと思います。
##「じゃあ、良いロゴって?」
私たちが日常生活の中で、毎日いくつものロゴを見ていると思いますが、いいデザインとそうでないものがあります。この善し悪しの定義は人それぞれ違うとは思いますが、本書の著者は「企業や商品のコンセプトがしっかりと込められ、且つデザイン的に魅力的なもの」だとしています。かっこいいデザインに走りすぎて中身のないものでは成立しないし、またその逆で、コンセプトはしっかりしているのだけれど、ダサイ。。この2つを上手く兼ねそなエラデザイン=良いロゴだということです。
##「大きく分けて2つあります。」
ロゴを大きく2つに大別したときの、その特徴と利点。
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オリジナリティのあるロゴ
企業や商品、それぞれのコンセプトをそのまま落とし込んでデザインする。=>企業や商品を表す究極の形。 -
既存の書体をシンプルに組んだロゴ
既存のフォントから適切なものを選んで使用する。=>本物感が出る、流行に左右されにくい。
2のような、既存のフォントを使ったロゴタイプは、欧米ではスタンダードな手法で、高級ブランドの多くはこの手法を採用しています、しかし、日本では1であげたような「オリジナリティのあるロゴ」がデザインの現場では多く求められる傾向にあるようです。
##「真面目な明朝体。」
書体が与えるイメージは様々あります。明朝体は高級感があって少し真面目、ゴシック体は親しみやすい印象をあたえます。欧文書体でいうと、セリフ書体
とサンセリフ書体がそうでしょうか。そんな風にその時々にあった書体を選ぶためには、その書体のもつイメージをしっかりと知っておく必要があります。その例が挙げられていたので、いくつか抜粋します。
・先進感…ゴシックもしくは明朝に平体をかけたり、斜体をかけると効果的です。また、定規とコンパスで描いたような幾何学的な書体も向いています。
・高級感…明朝もしくは、銅板系の書体が向いています。文字間をゆったりとあけることも効果的です。ワインのラベルのような高級感であれば、スクリプト書体も良いでしょう。場合によっては、細めのゴシック等も候補として考えられます。
・かわいい…丸ゴシックや、手書き風の書体を使うと効果的です。かわいいの中でも、大人っぽいかわいさなのか、子どもっぽいかわいさなのかで、選ぶ書体や太さも変えましょう。
・堅実さ…太めのゴシックをシンプルに使うと良いでしょう。ロゴにあまり手を加え過ぎないことがポイントです。格調なども同時に求められる場合は、太めの明朝もいいでしょう。
このように、クライアントのオーダー、商品や企業のイメージから選ぶ書体も変わってきます。
しかし難しいのが、「先進的な書体=◯◯書体」と定義づけることはできても、実際の現場で必ずしもそうとは言い切れないのです。たとえクライアントが「先進的で高級なイメージで」と発注してきたとしても、掘り下げていけば「高級だけど重たくなりすぎず現代的で、あと競合の◯◯社と似たデザインは嫌だな、お洒落な雰囲気もほしい…」など、クライアントの思いは複雑です。そんなたくさんの要素をまとめた上でどんな書体が適してるかを考える必要があります。上記のような知識は必ず必要ですが、あくまで「デザインする上でのヒント」として活用していくといいのかな、と思います。
##「大きく印象を変える小技。」
文字の一部を少しカットしたり、エレメントに手を加えたり、小さな技でそのロゴの与えるイメージは大きく変わります。たとえ、既存のフォントを一切いじらなかったとしても、文字間を広くあけたりするだけでも変わりますし、それらを図形の中に配置したりすることでまた大きく印象は違います。
そのように、既存の文字をコンセプトに適したかたちでアレンジしていくためには、まず文字のことをしっかりと知っておく必要があります。ここでいう
それは、フォントの種類を丸暗記することとは違います。たとえば「A」という文字をアレンジするためには、線がどう配置されていればAに見えるのか、ここまで形を変えてしまうとAには見えない、などの感覚を掴んでいないといけません。この本にはすべてのアルファベットがアレンジされた例が載っていますが、それを眺めていると、「Aにこんなにも幅があったのか」と思わされました。
##「和文ロゴって。」
基本的に欧文ロゴに比べて、和文ロゴは難易度が高くなります。私も作っていてとても苦労します。その理由としては、アルファベットは1画〜4画までのシンプルな形をしているのですが、和文にはひらがな・カタカナ・漢字があり、ひらがなは曲線的でカタカナは直線的、それらの多種多様な文字が一つのロゴの中で混ざり合うので、バランスをとるのが格段に難しくなってきます。本書の著者も当初はかなり苦手意識があったらしく、欧文ロゴだけをひたすら作りつづけていく中で、時間をかけてそのノウハウを和文のデザインに生かして行くことを見いだしたといいます。その方法が2つ紹介されていました。
1つは「既存書体をベースにして、欧文のロゴテクニックを活用する方法」。既出の、カットしたりエレメントに手を加えるといったテクニックを和文で行う方法です。筆記体のような雰囲気で、文字の一部分だけ伸ばしたり、わざとアンバランスにしたりなどすることで雰囲気はがらりと変わります。また、漢字の持つ大きな特徴「文字に意味がある」ことを生かし、イラスト・シンボルを加えたりすることもできます。この方法は、一から作らないのでバランスがとりやすくなります。
もう1つは「完全にオリジナルの文字をつくって、ロゴにする方法」。これはある程度の経験や技術が必要になってきます。難易度は前者に比べてかなり上がりますが、目を引くインパクトのあるロゴを作ることができます。とは言ってもいきなり一から字をデザインすることはかなり難しいです。私のようなロゴデザイン初心者はまず、既存の書体をつかってアレンジしデザインすることを学んでいった上で、少しずつこの手法を試していった方がいいように思います。
##「かんたんな流れ。」
ロゴを作るというときは、基本的にクライアントがいます。そのクライアントから依頼があってから、完成・納品するまでのかんたんな流れが書いてありました。これは、今の私の置かれる環境においてとても重要で有益なポイントでした。
・オーダーがくる
・要件を聞き、その中からキーワードを抽出する
…ここでできるだけ要望を聞き出します。一番困るのは「なんとなく良い感じで」と言われることです。クライアントは、こうしたいというビジョンはあるんだけれど言葉にうまくできないという場合が多いので、この段階はとても大切です。
・文字をつくる、デザインする
…抽出したキーワードからヒアリングし、書体やカラーなどイメージをかたちにしていきます。ここではいくつかの案を出すことが必要でしょう。いつも必ずすんなりOKが出るわけではありません。いくつかある候補の中から選んでもらうことは、保険をかける意味ももちろんありますが、「ここはこっちが良いけど、色はこれがいい」などのやりとりをする中で曖昧だったクライアントのイメージが具現化してくるメリットもあります。
また、これはどういう意図でこうなったのか?というコンセプトをきちんとクライアントに説明できるようにしておくことが重要です。場合によっては要望をそのままYESとするとデザイン的によくないこともあります。その時は、要望から「きっとここを強調したいのでは?」と相手の狙いを汲み取り、「それならこんなのはどうですか?」と提案することもできます。どのように受け止め、形にするかがデザインの鍵となります。
##「結局、ロゴって?」
著者はあとがきでこう言っていました。【ロゴとは「記号」です。その記号には、企業や商品等、それぞれの想いや未来へのビジョンが凝縮しています。しかし、それらは見る人に声高らかに語りかけるものではなく、静かに密やかに、その記号の中に潜んでいます。】
クライアントにはさまざまな狙いや想いがあるので、それを文字に落とし込む必要があります。しかし、文字として可読性も損なってはいけません。文字であって文字でない、ロゴデザインとは、文字が文字であるギリギリのところまで意味を持たせる=「記号」にしていく作業なんだな、と私は思いました。