コードの言語の壁を越える:AIが切り拓くプロジェクト効率化の新時代

tokusan

はじめに

皆さま、こんにちは。デロイト トーマツ ウェブサービス株式会社の tokusan です。

残暑が続いていますね。先日、家族で川遊びに行った際、水の流れを見ながらふと考えました。テクノロジーの世界も、この川のように絶え間なく変化し続けているのだと。

その変化の最前線にある取り組みの一つが、デジタル庁が最近実施した「行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証の環境整備」プロジェクトです。このプロジェクトは、行政機関における生成AIの活用可能性を探るため、安全な基盤上で生成AIを扱うことができる実証環境を整備し、様々なユースケースで検証を行ったものです。

この技術検証では、パブリックコメント対応の品質向上や、調達仕様書のラベリング、法令検索の効率化など、多岐にわたる分野でAIの活用が試みられました。中でも私が特に興味を持ったのが、「ソースコードの言語変換」に関する検証です。

この「生成AIによるソースコードの言語変換」技術は、私たちエンジニアの日々の業務やプロジェクトマネジメントに大きな影響を与える可能性を秘めています。特に、アジャイル開発における生産性向上や、レガシーシステムの現代化に革新をもたらすかもしれません。

それでは、この技術の詳細とプロジェクトへの影響について、一緒に見ていきましょう。

実証内容:AIによるコード変換の詳細

デジタル庁の技術検証では、Anthropic社の最新言語モデル「Claude 3 Sonnet」を使用し、主にJavaからPythonへのコード変換が試みられました。検証の対象となったのは500行程度の短いプログラムで、以下の手順で実施されています。

  1. GaiXerを使用して対象プログラムを生成
  2. 生成されたプログラムの処理概要とプログラム設計書を作成
  3. AIを用いてコード変換を実行

具体的な変換例として、ToDoリストアプリケーションのコードが変換されました。以下はその一部です。

// Java
class ToDoItem {
    private String description;
    private boolean completed;

    public ToDoItem(String description) {
        this.description = description;
        this.completed = false;
    }

    public String getDescription() {
        return description;
    }
    // ... 以下省略
}

このJavaコードは、以下のようなPythonコードに変換されました。

# Python
class ToDoItem:
    def __init__(self, description):
        self.description = description
        self.completed = False

    def get_description(self):
        return self.description
    # ... 以下省略

特に注目すべき結果:言語固有の機能の変換精度

この技術検証で特筆すべきは、AIが単なる構文変換を超えて、言語間の特性の違いを理解し、適切な変換を行えたことです。

例えば、上記の例では、Javaのカプセル化されたプライベートフィールドとゲッターメソッドが、Pythonではより簡潔なプロパティとして表現されています。これは、AIが各言語の設計思想や慣習を理解し、適切に変換できていることを示しています。

さらに興味深いのは、COBOLからJavaへの変換も試みられたことです。手続き型言語からオブジェクト指向言語への変換においても、AIが適切にデータ構造とプログラムの流れをクラスとメソッドに分割できることが確認されました。

これらの結果は、AIによるコード変換が表面的な書き換えを超え、言語の本質的な特徴を理解した上での変換が可能であることを示唆しています。

プロジェクトマネジメントへの影響と可能性

プロジェクトマネージャーの視点から見ると、この技術は以下のような可能性を秘めています。

  1. レガシーシステムの現代化の加速:古い言語で書かれたシステムを、より現代的な言語に効率的に移行できる可能性があります。
  2. クロスプラットフォーム開発の効率化:一つの言語で書かれたコードを、異なるプラットフォーム向けに迅速に変換できるようになるかもしれません。
  3. チームのスキルギャップの解消:特定の言語に精通したチームメンバーが、他の言語で書かれたコードを迅速に理解し、修正できるようになる可能性があります。

アジャイル開発における活用の可能性

アジャイル開発の文脈では、この技術は以下のような形で活用できる可能性があります。

  1. 迅速なプロトタイピング:異なる言語で素早くプロトタイプを作成し、比較検討することが容易になります。
  2. 継続的なリファクタリングの支援:コードベースの一部を異なる言語に変換し、パフォーマンスや保守性を向上させることができるかもしれません。
  3. ドキュメント生成の自動化:アジャイルソフトウェア開発宣言の「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」という原則に沿って、AIがソースコードから直接、処理概要やプログラム設計書を生成できる可能性があります。これにより、開発者はドキュメント作成に時間を取られることなく、より多くの時間を実際のコーディングに費やすことができるでしょう。

課題と今後の展望

しかし、この技術にはまだいくつかの課題があります。

  1. 変換精度の検証:AIによって変換されたコードが、元のプログラムと同じ処理を正確に行っているかを確認するプロセスが必要です。
  2. 大規模プログラムへの対応:今回の検証は500行程度の短いプログラムで行われたため、より大規模なプログラムでの有効性は更なる検証が必要です。
  3. セキュリティとプライバシーの確保:機密性の高いコードをAIに処理させる際のリスク管理が重要になります。

結論

AIによるコード変換技術は、ソフトウェア開発の効率を劇的に向上させる可能性を秘めています。特に、アジャイル開発やレガシーシステムの現代化において、大きな変革をもたらす可能性があります。

この技術の主な利点は以下の通りです。

  1. 言語間の壁を越えた効率的なコード変換
  2. レガシーシステムの迅速な現代化
  3. クロスプラットフォーム開発の効率化
  4. チームのスキルギャップの解消
  5. ドキュメント生成の自動化

一方で、変換精度の検証、大規模プログラムへの対応、セキュリティとプライバシーの確保など、課題も存在します。これらの課題に適切に対処しながら、AIと人間の協働を進めていくことが重要です。

AIによるコード変換技術は、私たちエンジニアの役割を拡張し、より創造的で価値の高い業務に集中する機会を提供します。この技術の進展を注視し、適切に活用していくことで、ソフトウェア開発の新たな地平を切り開くことができるでしょう。

参考文献

行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証の環境整備
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/19c125e9-35c5-48ba-a63f-f817bce95715/e03a8092/20240510_resources_ai_r5mainresults.pdf

また、こちらのURLにプロンプト集もあります。
https://www.digital.go.jp/news/19c125e9-35c5-48ba-a63f-f817bce95715

ネタバレ:この記事の制作過程

実は、この記事はAI(Claude-3 Sonnet (3.5))を使用して生成されました。以下が制作過程の概要です:

  1. デジタル庁の技術検証報告書の要約を作成
  2. ブログ記事の初稿を生成
  3. 特に注目すべき結果にフォーカスした内容の追加
  4. エンジニア向けの視点を強化
  5. アジャイル開発の観点を追加
  6. 文章の微調整と推敲
  7. 季節感のある導入部分の追加
  8. 参考文献との整合性確認
  9. 人間(筆者)からのフィードバックに基づく修正

この一連のやり取りには約3時間を要しました。AIの支援により、技術的な内容を迅速にまとめ、読みやすい形に整えることができました。ただし、最終的な内容の確認と微調整は人間(私)が行っています。

このプロセスは、まさに記事で紹介したAIと人間の協働の一例と言えるでしょう。AIが下書きを作成し、人間がその内容を精査・編集するというワークフローは、今後のコンテンツ制作の新たな標準になる可能性があります。

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プロジェクトリード / スクラムマスター
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