「誰のためのロゴデザイン?認知科学者のデザイン原論」を読んで 後編

先日95歳になる祖母に久々に会いに行ってきた堀川です。年齢を感じさせないほど元気で、手料理を振る舞ってくれますし、手土産に「ポンデリング」を所望しますし、好きな番組は「モヤさま」だそうです。本当に若いです。私は95歳まであんなに健康な働き者でいられるでしょうか。あと…71年後(笑)

さて、前回に引き続いて「誰のためのロゴデザイン?認知科学者のデザイン原論」を読んでの感想を書いていきます。

##「何をするかを知る。」

一つの道具・製品に対して、何ができるのか?逆に何ができないのか?ということを明確にユーザーに伝えられるかが大切です。特に、「何ができないか」といういわゆる制約を、ユーザーが見ただけでわかるようにしておくと、使う側が誤るリスクも減らすことができます。本書では、ハサミを例にあげていました。ハサミを見ると指を通す穴が2つ、場合によっては大小があり…大きい穴には自ずと親指が入り、そうすると他の指のポジションも自然と限られてきます。これが制約です。この道具で何ができるのか、ということをスムーズにユーザーに伝えるためには、このような制約を明確にすることが必要だということです。
また、その制約をどのようにして活用しているのかということが、4つの分類であげられていましたので、ハサミを例にとって私なりの解釈でまとめてみました。

  1. 物理的な制約…「指を入れる穴」のように穴のサイズと指のサイズで入るかどうかを物理的な制約をかけます。
  2. 意味的な制約…はさみは何かを切る道具です。なので、刃物部分が作用点になります。
  3. 文化的な制約…刃先が丸く、素材が危険でないプラスチックのような刃で、全体的にサイズの小さいものであったら、それは子供用だとわかります。
  4. 論理的な制約…これはハサミを例にとると少し難しいですが(笑)もしもある3種類のハサミが並んでいたとして、仮にユーザーがどれが紙切りばさみかを理解していなかったとしても、紙を切ろうとしたとき、高枝を切るハサミと、小さな糸切りばさみを除外し、残ったハサミを使うでしょう。

##「誤るは人の常。」

前回の投稿(第1〜4章)まで、人為的なエラーに対して、人が悪いのではなくそのようなわかりにくいデザインに問題がある。という前提で進んできましたが、それにも例外はあります。
いくら優れたデザインであったとしても、何かしらのアクシデントや、普通では考えにくい間違い方をするユーザーも必ずいます。それを防ぐことは無理だと言えますが、それをしっかりと想定した上で、重大なエラーに発展しないようにカバーする、そんなデザインをすることは可能です。

では、そんなデザインをするための条件どんなものなのでしょうか。
以下、本書より抜粋です。  

  1. エラーの原因を理解し、その原因が最も少なくなるようにデザインすること。
  2. 行為はもとに戻す事ができるようにすること。そうできないとしたら、元に戻せない操作はやりにくくしておくこと。
  3. 生じたエラーを発見しやすくすること。また、それは訂正しやすくしておくこと。
  4. エラーに対する態度を変えてみるべきだ。それを使っている人は作業をしようと試みているのであって、そのために不完全ながら目標に少しずつ近づいてきているのであると考えてみること。ユーザーがエラーを犯していると考えるべきではない。ユーザーの行動は望んでいることに少しずつ近づこうとする試みであると考えること。

つまり、「誤るは人の常」だから、誤りづらいデザイン、誤ったときは修正できるデザイン、誤ったことがわかりやすいデザインをするべきだということです。そして、エラーを起こしているユーザー自身をエラーとしてはいけないということです。

##「ユーザー中心のデザイン。」

これまでの内容を総括し、著者は「デザインの原則」なるものをはっきりと明記しています。

  1. 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する。
  2. 作業の構造を単純化する。
  3. 対象を目に見えるようにして、実行のへだたりと評価のへだたりに橋をかける。
  4. 対応づけを正しくする。
  5. 自然の制約や人工的な制約などの制約の力を活用する。
  6. エラーに備えたデザインをする。
  7. 以上のすべてがうまくいかないときには標準化する。

1〜6はこれまでにまとめた通り、そして最後、最前を尽くしてデザインをしてもなお、これらがすべてうまくいかない場合は、「標準化」するしかないのです。

標準化は制約の中の「文化的制約」のもう一つの側面に過ぎません。これはあくまで最後の手段であり、ほかに解決のしようがないことを認めることになります。そして、すべての人がある一つの共通のやり方に同意しなければなりません。まだ技術的に初歩の段階では標準化することは難しく、技術の成長がある程度のレベルに達し、ユーザーの中で「ここはこうするべきだ」という共通認識が生まれてから初めて協議が始まるのです。

本書はインダストリアルデザインを主軸に書かれていますが、もちろんグラフィックデザインやWebデザイン、あらゆるモノのデザインをする上で大切にしなければならない原則だと思います。ロゴのデザイン1つとっても、この7つの原則をしっかりと頭に入れておくことで、ユーザーの見やすい色を選ぶことや、間違った認識をされないわかりやすい文字を書くことなど、ディティールのすべてに繋がると思います。

この本の最後はこう締められています。
「よいデザインをもたらしてくれた人には、心の中で賞を贈ろう。花も贈ろう。よいデザインをしてくれなかった人には、きびしい批判をしよう。その人には雑草で十分である。」
背筋が伸びる言葉ですね(笑)これから実務経験を積む中でも、常に一つ一つの青果物に対して「誰のためのデザイン?」と自問しながら、ユーザーに花を贈られるデザイナーになれるよう頑張っていこうと思いました。良書でした。

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

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